【図解】DAOとNFTを組合わせたマーケティング : DAO (自律分散型組織)の特徴・仕組み、国内外の活用事例

DAO という言葉をニュースや新聞で目にすることが増えてきました。DAOとは、Decentralized Autonomous Organizatio(分散型の組織形態)のことを指し、従来の中央集権的な組織モデルに代わるものとして期待されています。このDAOとweb3技術の一つとして注目されるNFTを組み合わせたマーケティングについて紹介していきます。

目次

NFTとDAOの基本理解

NFTとは

NFT(Non-Fungible Token)の基本概念と特徴

NFT(Non-Fungible Token)は、分散型台帳技術であるブロックチェーンを用いて、アートや音楽などのデジタルアイテムを「特別なアイテム」に変えることができます。情報を安全かつ透明に保存するための技術であるブロックチェーンにより、デジタルアイテムが本物であることを証明し、その所有権を確立することができます。

NFTが提供するデジタルアセットの新たな可能性

NFTはデジタルアセットに新たな可能性をもたらしました。従来、デジタルデータは簡単にコピーできるため、所有者は本物のものを保持しているかどうかを証明するのが難しく、また、アーティストやクリエイターが収益を得る機会はデータの販売のタイミングなどに限られていました。

しかし、NFTによってこれらの課題を解決することができます。アーティストやクリエイターが、デジタルアートや音楽などの作品にNFTを紐付けることで、デジタルな「証明書」付きのデジタルアイテムとすることができます。そして、そのデジタルアイテムを取得した人は、NFTにより本物を所有していることを証明することができます。また、アーティストやクリエイターは、対象のデジタルアイテムが譲渡・貸出されたタイミングでも、収益を得ることが可能になりました。

NFTは「価値を共有・所有する」フラットな関係を実現する技術

NFTは、誰がそのアイテムの所有者であるかを明確にし、それを分散化(多くの人が共有)する技術でもあります。これにより、一つの中心的な組織や人が全てをコントロールする中央集権的な関係ではなく、「価値を共有・所有する」という平等な関係が実現されることとなりました。こうした概念・仕組みの変化により、共感・分散という思想が根底にある新しいフラットなコミュニティの形成を促進します。

DAO(分散型自律組織)とは?

DAO(Decentralized Autonomous Organization)は、分散型の組織形態であり、従来の中央集権的な組織モデルに代わるものとして期待されています。DAOは、スマートコントラクトと呼ばれるプログラムによって運営され、参加者はガバナンストークンを保有することで組織の運営に参加することができます。

DAO(分散型自律組織)の特徴

DAOの特徴は、透明性と自律性にあります。スマートコントラクトによって規定されるルールに従って運営が行われるため、中央機関やトップダウンの意思決定が排除されます。参加者はガバナンストークンの保有を通じて、投票や提案のプロセスに参加し、組織の方向性を決定します。

DAO(分散型自律組織)の仕組み

DAOの仕組みはスマートコントラクトを中心に展開されます。スマートコントラクトはプログラムであり、あらかじめ定義されたルールに基づいて自動的に運営が行われます。ガバナンストークンの保有者は、投票権を行使することで意思決定に参加し、組織の運営方針を決定します。

DAOの特徴
DAOの特徴

DAO(分散型自律組織)の代表的な事例

Bitcoin(ビットコイン)は、仮想通貨の草分けであり、同時にDAOの初期の成功例でもあります。Bitcoin(ビットコイン)は、現代の金融システムに大きな影響を与えた分散型デジタル通貨です。ビットコインは、中央銀行などの中央機関を介さずに、ピアツーピアのネットワーク上で取引を行うことができる点で画期的でした。

さらに、ビットコインのネットワークは、参加者がコンセンサスに基づいてルールを決定し、新しいビットコインを生成するプロセスを進める点で、DAOの基本的なアイデアに類似しています。ビットコインの成功は、分散型組織が実現可能であることを示し、その後のDAOの発展に影響を与えました。

DAO(分散型自律組織)の今後の見通し

DAOは今後さらに発展することが期待されています。特にDeFi(分散型ファイナンス)の拡大により、金融サービスの領域での活用が進むと予想されています。また、DAOのモデルは組織のあり方そのものを変革し、新たな組織の形態が登場する可能性を秘めています。

DAOとNFTの関係性

NFTは、デジタルアートや音楽などのデジタルアセットに一意の価値を付与する技術です。一方で、DAOはオンラインコミュニティや組織が共同で資源を管理し、意思決定を行う新しい形の組織構造を提供します。

これら2つのコンセプトが交差する点は、「共有の価値創造」と「所有権の透明性」にあります。NFTを利用することで、アーティストやクリエイターは作品の所有権をトークン化し、それをDAO内で管理や取引が行えるようになります。これにより、コミュニティメンバーは共同でアート作品やデジタルアセットの所有と管理を行うことが可能となります。

例えば、あるアート作品がNFTとして発行された場合、その所有権はDAOのメンバー間で共有することができます。そして、その作品に関する重要な決定(例:展示場所や価格設定等)は、DAOのメンバーが共同で行うことができます。これは、従来のアート界やビジネスモデルを大きく変革する可能性を持っています。

このように、NFTとDAOは、個人のクリエイターとコミュニティが共同で価値を創造し、それを公平かつ透明な方法で共有する新しい道を開いています。この関係性は、デジタルアセットの世界における革新的な協力と共有の新時代を切り開く鍵となります。

DAOとNFTの組み合わせ事例

海外事例

PleasrDAO

PleasrDAOは、カルチャー的にインパクトのあるNFTを、複数人で資金を出し合って買い集め、共同で「所有」する目的で2021年3月に設立されたDAOです。PleasrDAOは、Pooltogetherの創業者が「DAOを作って、このNFTに共同入札したい人いるか」とTwitter上で人を募ったところ自然に参加者が集まっていき、その後DAO化されたという経緯があります。

PleasrDAOでは、DAOとしてNFTアートを収集し、参加者間でコストや所有権を共有する仕組みを採用しています。したがって、所有しているNFTの価値が高まれば高まるほど、参加者へのリターンが増えていきます。この例は、デジタルアセットの新たな所有の形と言えるでしょう。

NounsDAO

NounsDAOは、NFTとDAOを組み合わせた革新的なプロジェクトです。Nouns(ナウンズ)とは、2021年8月8日にリリースされた、ピクセルドット風のキャラクターをモチーフにしたNFTコレクションです。

毎日一つ生成されオークションで販売されるNFTの収益は、DAOのトレジャリーに寄付されます。このNFTは、アートワークとしての価値と、DAOの意思決定に参加する権利を兼ね備えています。この組み合わせにより、新しい資金調達の方法が生まれ、多くの人々がプロジェクトの方向性に影響を与えることが可能となります。

さらに、アートとテクノロジーが融合し、新しい文化や価値が創出される可能性があります。NounsDAOは、従来の方法を超えて、新しい形のコミュニティと価値を築くためのプロジェクトとして注目されています。

Mirror

Mirrorは、2020年にDenis Nazarov氏が立ち上げたDAOを活用したメディアプラットフォームです。Mirrorでは、利用者が記事を書き、その記事をNFTとして販売することが可能です。書いた記事からの収益は、執筆者に直接還元されるシステムが取り入れられており、ブロックチェーン技術を用いて記事の複製を防ぐ取り組みも行われています。

さらに、Mirrorにはクラウドファンディングの機能も搭載されています。記事の内容に賛同する利用者からの資金を集めることができ、その際にはイーサリアムが通貨として利用されます。また、お礼としてオリジナルのERC20トークンを作成し、サポーターに提供することも可能です。

このような革新的な取り組みは、メディアとコミュニティの関係を再定義し、未来のコンテンツ産業における新しい可能性と期待を切り開くこととなるでしょう。

国内事例|地方創生にも貢献

山古志DAO|新潟県長岡市

山古志村は、新潟県の中山間地域にある人口800人以下の小さな村で、世界中に愛好家が増えている「錦鯉」発祥の地としても知られています。人口減少に伴う危機的な状況を打開するために、NFT・DAOといった新しい技術・仕組みを導入しています。

山古志村は、錦鯉をモチーフとしたデジタルアートであり「デジタル住民票」という意味合いも兼ね備えた「Nishikigoi NFT」を発行し、そのNFTを所有するデジタル村民の共同体を「山古志DAO」と呼んでいます。

Nishikigoi NFTの最大の特徴は「関係人口の最大化」であり、2023年8月からの第3弾セールでは、現在のデジタル村民約1,000人の10倍である10,000人に増やすことを目指しています。現在の地域住民800人に加えて、10,000人のグローバルなデジタル住民による独自の自治圏を作り出す方針です。

山古志村の取り組みは、地域の特産・特徴を活かした「デジタルアート」と「デジタル住民票」という2つの役割でNFTを活用し、デジタル住民を含めたDAOを作り出す先進的な取り組みとして、今後も注目を集めるでしょう。

(参考:総務省「山古志住民会議/ネオ山古志村(山古志DAO)」

e-加賀市民制度(実証実験)|石川県加賀市

直接的なDAOの事例ではないが、日本国内における関係人口増加の先進的な事例として、石川県加賀市のe-加賀市民制度を紹介します。

石川県加賀市は、2023年度から「e-加賀市民制度」導入予定であり、2023年3月には事前に公募で選定した参加者100名とともに実証実験を開始しました。

e-加賀市民制度は、観光・ワーケーション・多拠点生活などの様々な理由で加賀市を訪れる関係人口を増やすことを目的に、電子市民であるe-加賀市民に、加賀市が様々な行政サービスを提供する制度です。「e-加賀市民証」としてオリジナルNFTが採用され、e-加賀市民は、ワーケーションサービス・移動サービスなどを利用することができます。

オリジナルNFTは、NHK大河ドラマ「武蔵」や講談社「バガボンド」等の題字を手掛け、世界的に活躍するSYO ARTIST 吉川 壽一氏がデザインを担当し、3月の実証参加者に対しては無償で提供されました。

(参考:加賀市「e-加賀市民」

美しい村DAO

美しい村DAOは、地方創生に取り組む複数の自治体が連携して、地方創生に取り組むプロジェクトです。現在、鳥取県智頭町・静岡県松崎町が、先行して取り組みを進めています。「美しい村NFT」は、DAOへの参加権や投票権としての機能も持つ「デジタル村民証」と、地域の美しい風景や文化を伝える「アート」としての役割を持っています。

NFTを持つデジタル村民は、実際に現地に住むリアル村民と同じ様に温泉などの施設の割引を受けられたり、宿泊割引を受けることができます。また、DAOの一員として、地域資源体験サービスの企画に参画したり、DAO内の投票に参加することができるようになります。

NFTを活用して地域内外の”住民”を繋ぎ、DAOメンバーが地域の活性化に主体的に取り組むDAOを生み出す動きに今後も期待が集まります。

DAOの活用に向けた課題

これまでの紹介してきたように、NFTを会員証・住民証などとして活用してDAOを作り出す動きが活発化しています。一方、現状では、以下のような問題点もあり、今後の改善が望まれます。

法的位置付けが不明確

NFTとDAOの組み合わせには、法的位置付けが不明確という問題が存在します。特にNFTの販売収益に係る会計や税務上の取扱いが不明確であり、所有権の確立や管理責任が曖昧となることがあります。この点はコミュニティやプラットフォームの発展に制約を与える可能性があります。

税制整備が必要

一部のDAOは、収益を獲得し、保有者に対して配当を行う仕組みを持っています。しかし、DAOレベルでの課税が行われる場合、保有者にとっては二重課税のリスクが生じることがあります。こうした税制の明確化が求められており、パススルー課税などの新たな枠組みが模索されています。

意思決定に要する時間の長さ

DAOにおける意思決定プロセスは、過半数での決定や総意に基づくものがあります。しかし、意思決定のためには多くの保有者の参加が必要であり、決定までに時間がかかることがあります。また、総意を求めるプロセスが現実的でない場合、組織としての効率性が低下する可能性があります。

ハッキングのリスク

過去にはDAO自体がハッキングの被害に遭った事例もあります。例えば、過去に「The DAO」というDAOがハッキングを受け、資産が盗まれるという事件が発生しました。こうしたリスクは依然として存在し、セキュリティ対策の強化が求められています。

DAOの今後の見通し

今後、DAOはどのような広がりを見せていくのでしょうか。3つの視点から今後の見通しを追っていきましょう。

DeFi拡大によるDAOの増加・拡大の見込み

現在の多くのDeFiやNFTのプロジェクトはDAOによって管理されており、暗号資産市場の時価総額においてもDAOが大きな影響力を持つようになってきました。DeFiの拡大に伴い、金融分野だけでなく他の領域でもDAOの増加と拡大が予想されています。

組織の変革と新たな組織の登場

DAOの台頭により、従来の組織のあり方に変革がもたらされると予測されています。スマートコントラクトによって運営されるDAOは、中央集権的な組織に比べて効率的かつ透明性が高い特徴を持ちます。これにより、従来の組織の階層構造にとらわれず、よりフラットな組織形態が成立する可能性があります。

また、国を越えた国際的なDAOが増加することで、新たな組織体の登場も期待されます。物理的な拠点にとらわれずに世界中のメンバーが参加し、意思決定を行うDAOは、従来の国家や地域の枠組みを超えた新たなコミュニティを形成する可能性を秘めています。

ガバナンストークンの価値上昇

ガバナンストークンは、DAOの運営に参加するためのトークンであり、投票権や意思決定の参加権を保有者に付与します。今後、自身が支持するプロジェクトに参画したいと考える投資家が増加すると、そのプロジェクトのガバナンストークンの需要が高まり、価値が上昇する可能性があります。さらに、投票権だけでなく金銭的なインセンティブを持つガバナンストークンにより、より多くの人々がDAOへの参画を検討することが予想されます。

マーケティングにおけるNFTとDAO活用の可能性

NFTとDAOは、アート・記事などのデジタルアセットの所有の仕方の変化、地域の住民の概念の変化を生むだけでなく、「企業・ブランドと顧客の関係性」を大きく変化させる可能性を秘めています。

つまり、NFTとDAOを活用して新しいマーケティング戦略を生み出すこともできるのです。以下では、NFTとDAOによりどのように企業のマーケティングを変えていけるのか、紹介していきます。

Step1:ロイヤル顧客へ特別なNFTの提供

まず、特別なイベントの参加者や一定回数以上の商品購入・サービス利用者に対して、特別なデザインのNFTを付与することで、顧客はそのブランドに対する帰属意識や誇りを感じるようになります。これにより、顧客が利用頻度や単価を自然と上げることが期待できます。このNFTは、限定商品の購入権や特別なイベントへの招待など、顧客にとって価値のある特典を提供する手段としても活用できます。

Step2:NFTをDAOの参加権・企画権に

さらに、このNFTをDAOへの参加証とすることで、顧客は企業の一員として、ブランドの方向性や新商品の開発に積極的に関与することが可能となります。DAOの中では、メンバー間で商品やサービスの情報交換を行うとともに、新しい企画や開発に関わることもできます。このような関わり方は、顧客が利用頻度や単価をさらに高める動機となります。

Step3:顧客と共に創る顧客に愛されるブランドへ

そして、企業やブランドは、DAOを通じて得られる顧客の生の声を活かし、顧客起点でニーズに応じたサービスを提供することが可能となります。これにより、企業は次なるファンや愛好家を増やすことができ、さらには顧客が企業やブランドに積極的に貢献し、関わりたいと感じるコミュニティを形成することが可能となります。


「コミュニティマーケティング」について解説した記事も併せてご覧ください。

この新しい形のマーケティングは、顧客と企業が共にブランドを創り上げるという、まったく新しい関係性を築くことができるのです。そして、これは企業と顧客が一緒にブランドを作り上げる未来への第一歩となるでしょう。

DAOとNFTを組み合わせたマーケティングに関心のある方は、当社がまとめた「顧客ロイヤルティを高めるweb3活用事例レポート(2023年)」をダウンロードしてご覧ください。この資料では、日本国内外の様々なNFT活用事例やNFTを利用したマーケティング戦略、地域活性化の取り組みなど、効果的なNFT活用方法について詳しく解説しています。

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